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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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裏打(伊助とは組)

落忍。伊助と誰か。
一はの誰かのイメージで。






ちくちくと針が布の海を泳ぐ。流線型の銀の魚が腹を見せてとびあがり、海原にもぐる。そんなことを想起した。
「さすがに伊助は手馴れてるなぁ」
伊助は照れたように笑った。
「そうかな。そうでもないよ」
家業のせいか伊助は繕い物が得意だ。
「庄左ヱ門は自分でやるけど、針に糸が通せないから団蔵はよく来るよ。糸が通せても団蔵じゃ指が穴だらけになるし」
「ぞっとしないなぁ」
うん、と手元に目を落としながら伊助が笑う。
「きり丸としんべヱは乱太郎がいるし。乱太郎は目が悪いけど器用だから。それでもやっぱり、手はきずだらけになるみたいだけどね」
それらしい、と笑った。
できた、と伊助が糸を切る。着物を表がえして、広げてみる。
「うまいもんだなぁ」
「つぎを当てて穴はふさいだよ。ついでに膝のところに補強の布も当てといたから、ちょっとは丈夫になったと思う」
「至れりつくせりだな。ありがとう」
「どういたしまして」
忍装束を押しいただくと、伊助はちょっと目を細めて笑った。
「物持ちよくがぼくの信条だよ。長く使ってね」
「うん」
「また破れたらおいでよ。破れたままにしておかないこと」
「わかってるって」
「長く、長く使ってね」
伊助は伏し目がちに優しい声でいった。
「うん、伊助」
一緒に成長していこう。これから五年ずっと。
「でも成長期だからすぐに着れなくなるよ」
「うん。でもどうせ、また破るだろ。そうしたら」
「そしたら、またぼくが繕うよ」
これからもよろしく。




----------------------------------------
虎若か金吾のイメージだけど、相手は誰でもいいような。
は組はおちこぼれと名高いけども団結力と互いを知ってるんだっていう。
伊助はほころびたところを繕うのがうまいような、細やかな印象。

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フラグメント

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〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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