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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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蓮(曽良と芭蕉)

ギャグマンガ日和。曽良くんと芭蕉さん。
すごくショートショート。
この暴力師弟は案外うまく噛み合っているんじゃないか。






「ああ、きれいだねぇ」
ねぇ曽良くんと同意を求めてくる。曽良はそうですねと相槌を打つ。
ときどき不思議に思うのだ。
彼が綺麗だと思うものをどうして自分も綺麗だと感ずると思うのか?疑わないのだろうか?綺麗だとは思っていないかもしれない、と。
問うても、彼は困った顔をして、だってそういうものじゃないの?と逆にこちらに問うだろう。訊いているのはこちらなのだが。
だがそれでも、曽良は彼の言葉を聴きたいと思う。きれいだねぇ、きれいだよ。あぁ、それはきれいなものなんだ。
彼にとって当たり前にそこにあるものを、当たり前の顔をして、当たり前の言葉で。だってそういうものでしょ、きれいだもの。とってもきれいなんだよ、あれは。
そうやって何度も繰り返されれば、いずれ指摘される前に曽良のほうから指し示すことができるようになるかもしれない。
ああ、綺麗ですね。芭蕉さん、と。
それでも曽良はひとつ、けして芭蕉が指さすことのできない美しいものを知っている。
きれいだねぇと、笑みに細められる目。ゆるむ口元。どこかを見る眼差し。知らないものを尊ぶ微笑み。些細なものを素晴らしく、通り過ぎるだけの足元の何かをきちんと捉えて、つかまえる目。
汚いものも澱んだものも美しいものも、すべては同じくここに在るのであり、目を背けてもはじまらない。だが、だからといって美しいものを偽善や嘘だと思うのもまた誤りであると、彼が教えた。すべては当たり前にここに在る。それを見据えてはじめて、云えるのだろう。あぁきれいだ、と。
彼はそうやって澄んだものを見つけ当て、当たり前のように指し示すのだ。きれいだね。すてきだね。尊いね。
そうですね、と曽良はひとつ頷きを返す。ほんとうに尊いものは当たり前の顔をして目の前にあるのだと教えてくれたのは、貴方だ。
曽良の目がそれとわからぬほどに少し眩しげに細められているということを、相槌にふと振りかえって笑う芭蕉だけが、知っている。




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お互いのみぞ知る。
ひらく蓮の花も、旅路で山に落ちる落日も、梢の水滴も。

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フラグメント

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〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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