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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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寄する波(会計委員会)

落忍。会計委員会。
団蔵と潮江、と左吉と田村。






眠気の波が引いては寄せる。がくりとついた頬杖から頭を落として、団蔵は目を覚ます。またやってしまった。
顔をあげたが委員長は俯くように机に開かれた帳面を見ている。隣にいたはずの左吉がいない。田村もだ。
目をこすって、団蔵はいるはずのもう一人を探した。神崎は盛大に机に突っ伏していた。どうやら眠っている。
おや、と思って団蔵は潮江を見つめる。居眠りというのもおこがましいほど堂々と神崎が寝ているというのに、いつもの先輩の叱声は聞こえなかった。もしやと思いそうっと窺うと、潮江は腕組みして目を閉じていた。
神崎のいびきがごうごうと響く。これは叱ってくれといっているようなものだ。
膝でにじり寄ると、潮江はどうやら居眠りをしているようだった。
団蔵は詰めていた息をこっそり吐いた。珍しいこともあるものだ。
「起きたか、団蔵」
背後で聞こえた声に、団蔵は振り返る。田村が左吉とともに戸口にいた。
「今日やることはもうないぞ」
「田村先輩」
ああ、と田村が苦笑する。珍しいだろう、と。
こっくり頷いて、団蔵は潮江を仰ぐ。眠っていても眉間の皺が取れない委員長。
気付けばごそごそと左吉が近寄ってきていた。視線を交わすまでもなく、何故かはわかっている。
起きているときはこうまで簡単に見上げられない。潮江は帳面をつける彼らの頭の上から、ほらと紙面の一点を指す。そうして間違いを指摘するのだ。だから見上げることは少ない。
容易く近づける瞬間というのはあまりない。だからついつい、窺ってしまう。
「寝てるね」
誰にともなく小さく呟いた団蔵のことばに左吉が頷きを返す。
「寝てるな」
鬼の居ぬ間に、いいや寝てる間に、と口のなかで田村は呟き、一年生ふたりが委員長の様子をもの珍しそうに窺うのを見やった。思わず苦笑する。団蔵は眠気もさめたように目をぱっちり開いている。
田村は神崎を起こそうとして、やめた。もう少しすれば潮江も自然と目を覚まし、委員会はお開きとなるだろう。それまでもう少しだけ。




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そして潮江が起きると寄せてた一年生の波はぱーっと引いてゆくのです。起きてると怖いから笑
田村をおかんにしてしまうこれどうしたことだ。

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フラグメント

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〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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