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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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高さのちがう肩に降る

fkmt作品。越境。
13歳しげるとカイジ。

なんも設定は考えてないけど、従兄弟とか、叔父と甥とか、何かそんな感じの距離感かも。






「なに見てんの」
「ああ…あれだ。見えるか?しげる」
「…見えるよ。…いくらあんたと俺の身長に差があるからって、見えないことはないだろ」
「それもそうだな。…拗ねんなよ」
「拗ねてないよ。…去年は気付かなかったの?」
「あー…あったようななかったようなって感じだな。お前は気付いてたのか?」
「…どうだかね」
「おい、どっちだよ」
「どっちでもいいじゃない」
 
「カイジさん。アイスが溶ける」
「お…悪りぃ。歩きながら食うか」
「帰ってから食べようぜ。あの部屋だって蒸し風呂みたいなんだ」
「いいやがるな…悪かったな、蒸し風呂で」
「くくっ…いいさ。不自由くらいがちょうどいい」
「あ?」
「何もかも出来ると…結局身動きがとれなくなる。コンプレックスがあっていい。不条理や不満があったほうがいい。そのほうが…おもしろいってもんだろ」
「……ま、劣勢を引っ繰り返すのが賭けごとの醍醐味だけどよ。お前、俺のアパートが蒸し風呂な不条理を、どう引っ繰り返すってんだ?」
「ふふ。だから、アイスを食うのを家まで我慢しようっていってるんじゃない」
 
「珍しいな、お前がそんなもんに興味持つの」
「…そうかな」
「饅頭が食いたくなってきた」
「紅葉饅頭?…じゃあ今度来るときの土産は決まったな」
「…とかいって、お前、次いつ来るかわからねぇからな。前も、ほら、憶えてるか。こうやって歩いてて…俺が洗剤買うの忘れた、つったら、次来たとき洗濯洗剤と台所洗剤持ってきやがったろ。四か月も間があいてんのに、あれはねぇ」
「でも、要るもんだろ?」
「…あって損はないけどよ」
「なら、問題ないさ」
 
「寒いと思ったら、とうとう降ったな」
「そうだね」
「お前、もうちっと厚着しろよ。見てるこっちが寒みぃ」
「厚着もいいけど、あんたこそ気を付けたほうがいい」
「なにが…、っ」
「ほら…いわんこっちゃない」
「てめー…」
「怒らない怒らない。あんた、去年もそこで転んだろ。だから気を付けろっていったのに」
「何に気を付けるのかいえよ…」
「いうまでもないかと思ってさ」
「くっそ…」
 
高さの違う肩に降る、桜の花弁。紅葉。粉雪。夏の日射しが投げかける強い光線と、落とす影の長さの違い。
通りに面した駐車場の、コンクリ塀の向こうから覗く桜の枝のこと。
熱中症になりかけながら日向の道を歩く、夏日のこと。
きれいな紅葉を本のしおりにすること。後に雑誌の間から枯れた紅葉を見つけた男が首を傾げ、次いで苦笑すること。
降る端から溶けて滑るのに、擦り切れたスニーカーを履き続けること。
彼らは時々、同じ家路を辿る。後からは思い出せないみちみち交わした会話が、同じような繰り返しであるからこそ、つまらないと思いつつも続けてしまう。交わされたことさえ忘れてしまうような、どうでもいい会話の数々。それらが互いの肩に、背に、道に、降り積もる。
さくさくとそれらを踏んで歩きつつ、靴裏に、耳に心地よい音に、もう少しだけこうして道を辿ることがあってもいいと、歩くたびに、思い出したように、考える。




*****
「蕾」 as far as I know さま

けして口にしないうえに、あったことさえ忘れてしまう感傷です。
桜が散れば思い出しもしない。夏の日差しが翳れば。紅葉が土の肥やしとなれば。雪が溶ければ、思い出しもしない。そのときだけの感傷。
でもだから、そのときだけ、心地よいと思ってればいいです。この二人の関係は継続されたり進展したりするものじゃないと思う。
 
13歳だったらもっと甘えていいじゃない。カイジがお兄さんぶって保護者ぶったっていいじゃない。
と思いつつ、デレる様子がちっとも思い浮かばなかった。
キャラ崩壊かってくらい兄弟ぽくさせてもいいものか…
 
あくまで「高さの違う肩」だからこその話。そのうち「肩を並べる」くらいになったら、もうこんなことはない、ような。
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フラグメント

↑old↓new
〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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