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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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ていたらくの作り笑い

fkmt作品。
しげる(13歳、中学一年)、涯(14歳、中学二年)、零(17歳、高校二年)、カイジ(21歳、ニート)が暮らすという越境でパラレル。
無駄に長い。
 
遠い親戚とか行きがかりとかで一緒に暮らしてる。名字は全員違う。未成年三人の身元引受人はカイジ。未成年たちが成人したら、或いは学校卒業したら解消する予定の期間限定の奇妙な同居。
 
しげるはやっぱりギャンブラー。涯は真面目な学生。零は優等生。カイジはクズニートだけどいい主夫。
みんなしげるの将来が大物の予感しかなくてたのしみと同時に危ない橋渡り過ぎててハラハラ。
みんな涯が一家の常識人過ぎてばかかわいい。
みんな零が優しくてだいすきだけど無理しないでねって思ってる。
みんなカイジをお母さんみたいなクズ(ニート)だと思ってる。
 
学費は、しげると涯はまだ中学生なのでなんとでもなる、零は奨学金。
生活費は、生活保護的な何かが出る。しげると涯は天涯孤独だけど、零は両親と死別したのでその保険金がある(使わないけど)。カイジは実家から時々援助してもらう。
ぶっちゃけ貧乏だけど、しげるがぽんと持ってくる怪しいお金の山がある上に、あまり贅沢するわけでもないのでたいして困ってない。

コンセプト:「一緒にごはん食べればいいじゃない」






行ってきます、と家を出た。しげるの手には弁当箱。ちなみに零が作った。
暮らしている四人の中で最も細かいところに気が回るのは零だった。俺が自分の作るついでだからさ、よければ持ってってよ。そういってくれるので、有難く受け取っている。
しかし、しげるは知っている。零はあまり料理が得意でないことを。零の通う進学校の学食がそこそこうまいということを。
それでも、給食と弁当が半々のしげると涯の中学校の献立プリントを冷蔵庫に貼って、腕組みして考え込んでいる零をみれば、何もいえなかった。
ちなみにしげると涯は同じ中学校に通っているが、涯は対価なしで弁当を受け取ることに抵抗があるのか、いつも弁当を固辞する。それでも最後には負けてしまうのは、しげると同じく、零の困ったような笑みに弱いからだ。
「…カイジさんが朝起きられれば、話も別なんだろうがな…」
家事を引き受けている我が家のニートさまのことを思い、しげるは笑った。

 
いちばん最後にゆっくりと家を出るしげるを見送って、カイジは眠い目をこすりながらテレビをつけた。朝のニュースの天気予報は、今日は曇りだと告げていた。
もう少し早く起きられれば、学校が遠いために早く出る零と、新聞配達のアルバイトをしてる涯の背中を見送ることが出来るのかもしれないが、カイジにはしげるを送り出すので精一杯だった。
「いやでも、涯は無理…」
新聞配達は早朝から始まる。とても起きれるとは思えない。
涯は弁当の日は一度戻って来て、朝食を摂ってから零お手製の弁当を持って出る。わざわざ作ってもらうことを固辞する涯が、自分で作らず、零の弁当を受け取る理由のひとつがこのバイトだ。時間的に余裕がないのだ。
ちなみに中学生のアルバイトは禁止されているが、涯の家庭の事情を話して、学校には納得してもらっている。本人はもっと沢山バイトをして、自分の生活費を賄えたらと思っているようだったが、流石に学校が中学生に許せるバイトはこの程度だった。
零が炊飯器に残していった米に卵を落として、卵かけご飯を食べながらテレビを見る。
涯は自立したがりだ。零も自分の面倒は自分でみられる。しげるは自立とか自活とかいう問題ではなく、しげるという生き物すぎる。
「何にも出来ねェのは俺ばかり、ってか…」
この同居が解消されて、いちばん困るのは恐らく俺だ、とカイジは思う。
彼は職なし、学歴なし、彼女なし、金なしで、未来への当てもない。この同居生活があるから、未成年たちがいるから、なんとかそれを軸に生活を回しているというだけだ。生活費の足しになる程度のアルバイトをしに行くか、パチスロに行くか、そのくらいのことしかしていない。
未成年たち三人の親代わりになれるなどと思ったわけでもないが、あまりにも出来ることが少なくて、ため息ばかりだ。
だが、よい方向に変わったことも、いくつかある。
第一に、朝起きるようになった。隙あらば学校をさぼりどこかへ行こうとするしげるに通学鞄を持たせて送り出すのは、カイジの仕事だ。
あとは家事。洗濯と掃除。それくらいは出来る。食事も、男の料理だが、まぁ出来る。ニート生活が板に付き過ぎて、朝だけは起きれなくて作れないのだが。
なんとか、生活している、という実感が持てるようになってきた。
「あーあ、新台入ってるし、スロでも行くかな…」
そうぼやきながら、ご飯茶わんと炊飯用の釜を洗い、洗濯機をまわし、郵便受けに入っていたチラシに目を通し、自嘲混じりの笑みを浮かべつつ今日も主夫は家事を片づける。

 
涯はしげるより大分早く家を出る。新聞配達のアルバイトも理由であるが、家にじっとしていれられないのだ。
家の居心地が悪いというわけではない。むしろ、居心地はいい。
年長者だがかさにかかってものをいわないカイジは若年の保護者である分を弁えている。よく干渉してくる零に辟易することがないではないが、基本的に親切心から来ているとわかる。しげるは涯と同じく個人主義者で、程よい距離感を知っているので困ることは少ない。
他人同士の寄り集まりにしては、自分たちの生活はそこそこうまくいっていると思う。
その、居心地が悪くないというところが、居心地が悪いのだ。
彼らは互いに何も責任を追う関係がない。他人だ。他人過ぎるのだ。血縁も薄い。頼っていい理由がない。どこまで頼るのが普通なのかわからない。
涯は元々、独立独歩を信条としている。なかなか難しいが、もう少し齢を重ねれば一人で出来ることも増えるだろう。
その涯が、居心地のいい家にいると、揺れる。困る。どう話していいのか、どう関わっていいのか、他人という名の家族との距離をはかりかねて。
誰かと一緒に居るということに、未だ慣れない。
宇海さんは凄いな、と呟いた。彼は、あらゆるものに無頓着なしげるの面倒を見て、カイジの出来ない家事の穴を埋めて、涯のような一人でいたがる厄介な“家族”を笑って引っ張り込む。そして自分の面倒もみている。零は進学校の特進クラスで、成績は三本の指に入る。
自立したい涯の理想とは些か違うが、零は涯の理想形のひとつではあるかもしれなかった。素直に憧れる。涯が得手ではない人づきあいを如才なくこなしてる零をみると、羨むではないが、真似できないなと思う。
人づきあいはカイジも苦手だ。あれは自信のなさからくる挙動不審と、そして根底は涯のような一人でいたがる部分のせいだ。涯も無愛想だが、カイジの不器用さを見ていると、同情すると同時、ああははるまいと思う。いい反面教師だ。
そして、しげる。涯のひとつ年下。だがとてもかわいい弟といった風情ではない。
しげるの人づきあいの仕方は奇妙だった。一言でいえば、子どもらしくない。
一対一で相対せざるをえない、視線のちからとでもいうべきものがあるのだ。その前では、年齢は関係ない。だがあまりにも苛烈に対峙することを乞うあのスタイルでは、友人はいないだろうなと思った。これは人のことをいえない。だが涯は友人と呼べるものがいないわけではない、と思う。一応。たぶん。
その友人、石原と昼休みに弁当を開けて、ああ、と涯は思わず声をあげた。
「どうした、涯」
「…なんでもない」
少し赤くなった顔を隠すように俯いたら、自然と弁当を見るかたちになった。
ほんとうに、よく見ている。
おかずは玉子焼きと冷凍のからあげ。そしてごはんには、のりたまがかかっていた。
この貸し借りはどう返せばいいのだろうか?返せるのだろうか。いや、そもそもこれは貸し借りなのだろうか。
好物を知られていたという妙な気恥ずかしさと、それを弁当にさりげなく盛り込まれているという好意の照れくささ。俺も宇海さんをよく見ることから始めなければ、とのりたまのかかったごはんを石原が怪訝に思うほどの勢いでかきこみつつ、涯は心に決めた。

 
電車通学は嫌いじゃないが、長距離となると面倒だ。特に朝の通勤通学ラッシュはつらい。
帰りはそう混んではいないが、零は電車を降りるとふぅと息をついた。
以前に、しげるを電車内で見たことがある。
しげるは一人で、窓の外を見るでもなく、ただ座席に座っていた。
なんでしげるがこの電車に乗っているんだろう。しかも、家に帰る方向の電車なので、しげるはどこかへ行っていたことになる。どこへ行っていたのだろうか。
どうせ降りる駅が同じだし、と思い、声はかけずにいた。触れられたくないことは誰にでもある。同じ家に暮らしているからこそ、距離感を保たなければならない。
停車した電車から降りてしげるの姿を探したが、人ごみに紛れたのかどこにも見つけられなかった。
さっさと改札を出て行ってしまったのか。そう思いながら家に帰りつき、しげるがまだ帰宅していないことを知った。
そのとき零は、しげるはあの電車に乗ったまま、家のある駅では降りなかったのだとわかった。
まるで根拠はないが、二度と帰ってこないかもしれない、ぼんやりと、そう思った。
結局、しげるは一晩帰らなかったが、翌日の夕方には何食わぬ顔をして居間でカップ麺をすすっているところを買い物から帰宅したカイジに発見された。
カイジと零はお説教をした。いわく、危ないことは程々に。いわく、誰かのところに泊まるなら連絡を寄越せ。いわく、夕飯がいらないときはいえ。いわく、何かあったら保護者責任になるのだから、自分の責任が自分でとれるくらいの年齢になるまで危ない橋は渡らないこと。
しげるはそれらにいちいち頷いて、わかったよ、といった。
信用ないね、俺も。零もカイジさんも、そんなに俺が変なことしてると思ってるの?
にやりとした笑みと共にいわれた。淡々としているように見えるしげるの無鉄砲ぷりは、時折紙袋にいれて居間のテーブルに放り投げられる札束が証明している。
一体何をしているのか。しげるがしのぎを削っているものは、武闘派の涯とも、社会の構造に手を伸ばそうとする零とも、底辺から勝利をもぎ取ろうとするカイジとも、どれとも微妙に違う。そのため、彼らは互いが何をしているのか、完全には理解できないし、それを手助けすることも出来ない。
これがこの“家族”の限界であり、壁だ、と零は理解している。
それは、別にいい。壁はあっても、同じ屋根の下だ。だったらそれでいい。
ただ、零は年下のしげると零がかわいい。思わず構ってやりたくなる。お節介かもしれない。
カイジは傍から見ていても危なっかしい若者で保護者だが、不器用に自分たち未成年を庇ったり叱ったりするのを見ると、胸が詰まる心地がする。零はよく出来た子どもだったため、実の両親に叱られる経験も庇われるような失態も特になかった。
零は、自分はこの共同生活で、子ども時代をやり直しているようだ、と時々思う。
抜けたところの多いカイジだが、情を以って接してくる彼は、とても保護者だった。
これは、たぶん財産だ。後から振り返り、これが貴重な財産となる。
優しくされた経験、優しくした経験。家族としてのそれを、零は殆ど初めて経験している。
だから、天涯孤独の涯としげるにもそれをあげたい。彼らがそういう経験を必要としているかはわからないが。なにせ一方は自立を望み、一方は我が道をゆく子どもなため。
だから、涯やしげるが弁当や家のあれこれを気に病むことなどないのだ、と零は思う。したいからしているのだ。優しくしたい。優しくしてもらっているから。俺は俺のために、そうしているのだから。
家に帰りつき、ただいまと声をかけた。
 
「あ、宇海さん。お帰りなさい」
「あれ、涯くんだけ?」
「その、伊藤さんは味噌が切れたっていって今、買いに出てったところで…」
「しげるは?」
「居間で寝てます」
「ああ、今寝ると夜寝れなくなるってのになぁ。ごはんは出来てるんだ?」
「味噌汁以外は。今夜は豚肉の生姜焼きみたいです」
「わあ、それ大好き」

思わず喜色を浮かべると、涯もうっすらと笑った。ように見えた。
多感な年頃の涯と淡泊なしげるはなかなか素直な笑顔を見せてくれない。おお、珍しいものが見れた、と驚き半分嬉しさ半分の気持ちで、部屋に荷物を置きに行った。学生服から着替えていると、玄関の扉が開く音がした。

「カイジさん?」
「お、零。帰ってたか。おかえり」

カイジの提げた買い物袋の中には、味噌のパックと一緒に煙草が一カートン入っていた。涯にお使いを頼まなかったのはこれが理由だろう。

「ただいま。おかえりカイジさん。夕飯にする?」
「ただいま。ああ、もうほとんど出来てんだ。味噌汁はあと味噌とくだけだから、他のもん持ってっちまってくれ」
「うん。涯くん、しげる起こしてくれるかな」
「そういうと思って、さっき起こしました。また寝ましたけど」
「運動系の部活も入ってないってのに、しげるはよく寝るしよく食べるよなぁ」
「育ち盛りだから。涯くんもだけどね」
「自分も成長期だろ、零。ああそういや涯はちょっと背が伸びたかな」
「最近手足がいたいです」
「おっ、成長痛じゃね?」

麦茶とグラスを出した涯が居間に行き、寝ているしげるを起こした。
「…夕飯の時間だぞ」
しげるはねむそうにしていたが起きあがり、ああ、とかうん、とかいった。
頭をぐらぐらさせながらテレビの見える席に座り、しげるは目を擦った。く、としげるが苦笑した気配がした。

「…涯、この家は、変にまっとうだな」
「うん?」
「…いい年した男四人が、夕飯を、一緒にとる」
「ああ…」

寝ぼけたしげるはそういった。涯は返すことばがなくて、答えに詰まった。
台所に戻りかけた姿勢のまま、訊いた。

「嫌か?」
意外にも、しげるは可笑しそうに笑った。
「いいや。悪くない。…お前は?」
「俺か。俺は…」
「あ、しげる起きたか?」

零がひょいと顔をのぞかせた。涯は悪いことをしたわけでもないのにどきりとすると、頷いて、急いで台所に戻った。零はちょっと怪訝そうな顔をしたが、まぁいいかと思い直した。

「しげる。制服着替えて来いよ。汚したら面倒だ」
「子どもじゃあるまいし」
「まだ子どもだよ、子どもな俺よりも」
「零は子どもか」
「そうさ。だから、しげるはもっと子どもだ。子ども扱いが嫌なら、まずはちゃんと着替えて、目を覚ましてから食卓につくんだな」
「それが出来るってだけで大人かね」
「どうだろうな。大人でも出来ないかもな」
「うちのお母さん…いやお父さん?にも出来ないかもね。わかったよ、着替えてくる」
「さぁメシだぞー…ってしげる、どこ行くんだよ」
 
お父さんにしてお母さんといわれた弱冠二十一歳のニートに、ちょっと着替えてくる、と答えたしげるが部屋に向かう。その横を通り抜けて、涯が全員分の箸と好物ののりたまふりかけを手にやってきた。
涯は知られていないつもりかもしれないが、夕飯時にこれだけ頻繁に使っているのを見ると、ああすきなんだろうなぁというのは一目瞭然だ。
今日の弁当は喜んでもらえたかなぁ、と思いながら、零は全員分のグラスに麦茶をそそいだ。

「宇海さん」
「なに?」
「弁当、ありがとうございました」
「いいよ、そんなの。俺のついでだし。こっちこそ、大したもの作れなくてごめん」
「そんなことない、です」
「からあげ冷凍のやつだし…」
「作ってもらってる身で、そんな、何がいいとか悪いとか、ないです。ほんとうに」
「へえ。ないの?じゃあリクエストは?玉子焼きは甘いのがいいとか、しょっぱいのがいいとか」
「リクエスト…何でもですか?」
「うん」
涯が要望を伝えてくるのは珍しいなと思い、零は頷いた。
「じゃあ、宇海さんの好きなものってなんですか」
「え?」
「リクエストです。何でも、いい、んですよね?」
黙って会話を聞いていたカイジがぷっと吹き出した。
「涯、お前それ、お前のリクエストじゃなくて零のリクエストを訊いてどうすんだよ。弁当作るのか?」
「そうですけど…」
「素かよ。って、え?」
「ちょっと時間調整すれば、弁当作る時間がとれるかなって思って。流石に毎回は無理ですけど…作ってもらいっぱなしは、いい気分じゃないんで」
 
しっかりとした目でこちらを見据えてくる涯の視線のまっすぐさを、零は受け止めた。
 
自慢ではないが、如才のない人づきあいには自信があった。
この同居が決まったとき、頼りにならなそうな若い身元引受人を見て、お世辞にも扱いやすいとはいいかねることが一目でわかる年下の少年二人を見て、このひとたちとやっていけるだろうか、と思った。
出来るだけ面倒を少なくしたかったために、優しいという仮面をかぶった。
何年か共に暮らす同居人たちと、せめて険悪な関係にならないように。ただそれだけのために。
それが、どうだ。
優しくてたいていのことは出来るけど、それなりの親しみが持てる優等生の作り笑いが、このていたらくだ。
きっと今、鏡をみたら、自分はとても優等生とはいい難いゆるんだ笑みを浮かべているだろう。
 
「…涯くん、料理出来る?」
「あ、それは……これから覚えます」
「そっか。じゃあまず、カイジさんの手伝いから始めようか。毎日じゃなくて、週に何日か、カイジさんと一緒に夕飯作るんだ。ダメかな、カイジさん」
「俺は別にいいけどよ。涯、お前なに作りたい?」
「宇海さんの好きなものです」
「やけにこだわるなぁ、それ。じゃあカレーで。辛いやつ」
「ああ、カレーいいな。初心者向けだし。涯、包丁持ったことはあるっけ」
「…ないわけではないです」
「うん、そんなもんだよな」
「でも、カレーじゃ、弁当に入れられないです」
「まずカレー。カレーが及第点とったら、弁当のおかずだよ。俺もそのときまでに、好きなおかず考えとくから」
「…生姜焼き目の前にして、なんでカレーの話してるのさ」
 
着替えたしげるがやってきて、首を傾げた。カイジがこいこいと手招きする。先食べててよかったのに、といいながら席につくと、いただきますはみんな揃ってからだろ一応、と唯一普通の家庭で育ったカイジがいった。

「いや、涯が零に弁当作りたいっつーから」
「弁当にカレー?ふぅん…いいんじゃない、別に」
「いやそれは流石にちょっとアレだから、弁当の前に料理の基本からいこうっつーことに」
「ああ、そいつはいい考えだ…涯にさせると、ぜんぶ日の丸かのりたまになりそうだからな」
しげるにも涯の好物はお見通しだったらしい。
涯は赤くなったが、中学二年生男子の料理スキルなんてそんなものだろう。むしろ作ろうと思うだけえらい。
「じゃあ全員揃ったし、手を合わせてー」
「いただきます」
「いただきます」
「…いただきます」
 
麦茶おかわりください。カイジさん味噌汁の味噌変えた?あー近所のスーパーにいつものやつ置いてなくて。のりたま俺にもちょうだい。
 
「で、涯。零の弁当はわかったけど、俺のは作ってくれるんだろうな」
「…っ。…作る」
「考えてなかったな」
「一人分も三人分も、大して変わらないって。夕飯の残り詰めてもいいんだし」
「ああ、その手があったか」
「くく、カイジさんだけ仲間はずれだね」
「はあ?」
「あの、…伊藤さんも、弁当要りますか?」
「いや、俺はいいよ!だってたいがい家にいるし。余計な手間増やさなくても」
「家にいなけりゃスロうちに行ってるしね」
「弁当持参でパチ屋に行くニートか…」
「酷いな」
「ああ、酷い」
「お前ら想像で酷い酷いいうな」
 
伊藤家の食卓は、今日も賑やかだ。




*****
蕾 as far as I knowさま

同じ世界観で、19歳アカギ(カイジのギャンブル通した知り合い)、佐原(カイジのバイト仲間)、が飲みしたり雀卓囲んでたりしたらいい。あっひとり足りない分は森田とか辺ちゃんとか。
銀王と神域が親戚のおじさんみたいなポジションで酒持ってきたりしてもたのしい(注:伊藤家はほぼ未成年) 天も酒だろうな。食糧持ってきてくれるのは沢田さんだけ。

何の説明もなくまた書きたい同居パラレル。
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フラグメント

↑old↓new
〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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