柱時計が正午を指した。
揺れる振り子が鎌を想起させて、ソウルはこっそり笑った。
図書館の柱時計は鳴らない。読書の妨げになるからだ。静粛を旨とする一画で、チャイムの音は遠い。だから気を抜くとすぐに時間がわからなくなってしまう。
こちこちと精緻で眠くなるリズムを刻んで針は頑なに動き続けている。
時計が進むのは振り子が揺れるからだ。振り子は飾りではない。振り子が揺れるから針は進むし鐘は鳴るのだ。
ソウルは戯れに、振り子と時計のくだりを自らと相棒に置き換えてみる。
大鎌が振るわれる。
長大な得物を自在に操ってみろ。それは振り子。お前を左右するもの。
俺を自在に左右することで、お前はお前として自由になる。そのお前に影響される俺というひと振りの鎌。武器とはそうしたものだ。職人と武器は不可分だ。
武器は道具ではなく、手足であり、また手足などではなく、れっきとした道具である。
どちらも、踏まえて。
俺はお前の手足のようにお前を偽らないものでありたい。
ここぞというときは特に。
だがとりあえず、今は左右されているのはソウルのほうらしい。振り子が揺れて遠いチャイムが鳴って、時間が来たというのにまだ彼の相棒は書物に埋れている。
あの振り子がもう数往復したら、時間だと声をかけようか。
振り子は彼の嘆息と苦笑を左右し、ゆっくりとしかし確かなリズムで行き来している。
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偉人の言葉で15題 207ベータ さま
ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。
ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。