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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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かじつ(五年ろ組)

すごく短い。

落乱。五年ろ組。三郎と雷蔵と竹谷。






花を渡すことになにがしかの感謝の意があるとしたら、私が君に渡すことはつまりそれだろう。
「花を摘むのはかわいそう。そこでただ咲いているのに」
しかし私も君も、生き物を育む学友も、花を摘むのを好まない。もちろん必要ならばそれを厭うこともない。だが、だから花は渡さない。
「花が咲くのは虫のためさ。そして花自身のためさ。そういうふうにできているからなんだ」
竹谷はいう。成立しているシステムなのだと。
「花が咲くのは実をつけるためさ。種を産み落とすためさ」
私はいう。死んで花実が咲くものか、と。
「花が咲くのに意味はないさ。咲くから、あるから、ただそれだけさ。そして僕らがそれを見てとやかくいっているだけなのさ」
雷蔵がいう。そうして一輪を手折ることなく、花咲き乱れる野原に手をひいてゆく。
その野があまりに明るくひらけていて、眩しいから。うつくしいから。
だから私は花を君に渡さない。
手の中で柿をもてあそぶ。やわらかく熟れた甘柿だ。日向の陽光を煮詰めたような色をしている。
花を摘むことを選ばない友に、食い意地の張った君に、私は果実を手渡そうと思う。




----------------------------------------
かじつ。果実。佳日。過日。
残せるのは、渡せるのはそれだけ。

久々知が入れられなかったのは何ていうか想像つかなかったからです。たぶんいうとするなら上の雷蔵みたいなこというんだと思います。
三郎が見つけて雷蔵が手を引いて竹谷がみんな呼んで久々知が連れてこられる。
五年はそんなイメージ。誰かひとりが知ったことを隣の誰かに普通に教えてあげて、みんなで笑う。

今年のポケモン映画で、あの花はつまり「感謝」なんだってきいたので、着想はそこから。

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フラグメント

↑old↓new
〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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