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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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星に願いを

即興小説トレーニング」さんでチャレンジしたもの。

納得出来なくて未完ってつけたけど、未完は未完でいいのかもしれない。
話のオチ自体はついてます。

お題:「記録にない雨」
リミット:15分
文字数:1041字







星が降ったけれども多分誰も見てなかった。残念だ。僕らは今夜そのために集まったっていうのに。
 
とはいえ僕らは星座に興味があるわけでも、天文学部とかそういう学部や部活動に属しているわけでもない。ラジオで流星雨のニュースが流れたから行ってみよっか、とかそういう素敵な提案をして実行するカップルでもない。実に残念なことに。
じゃあなんで秋も深まるこの時期に野外でぼんやりしてるかって、そう、なんていうのかな。ありていにいえば暇だったんだ。
 
「大人になったら何になりたい?」
「大人ってなにさ」
「二十歳になったら?」
「二十歳って大人?」
「十年後何してると思う、って訊いたほうが具体的じゃないの」
「いや、具体性に欠けることじゃどっちもどっちだな」
 
で、何がいいたかったんだよ?と問うと、ううんと腕を組んで、彼は「未来の話をしたかったんだ」といった。
 
「ああ一世紀後には青い猫型ロボットがいるかとかそういう」
「いやもっと身近な」
「僕たちのことを?」
「俺たちのことを」
「私たちがどうしてるかなんて、私たちにもわからないと思うよ」
「それもそうだ」
「だからそれを考えようって話さ」
「考えてどうするのさ」
「考えて、まぁ…それだけだけど」
「十年後のことは十年後になればわかるさ」
「楽観的だな。明日も来ないかもしれないのに」
「明日は来るさ」
「いいや来ない」
「なんで」
「来た瞬間にそれは“今日”になる」
「ああ…まぁそうだけど」
「でも、いつまで経っても来ない“明日”のために、今ここにある“今日”を蔑ろにするのは本末転倒よね」
「それもそうだ」
「お前さっきから、それもそうだ、ばっかりだな」
 
僕らは語り合った。自転車と鞄を放り出して。来ない未来の話をした。
来し方と行く末はひとしく遠かった。今ここからあの見える星までよりも遠いだろう。あの星の名前も知りやしないのに勝手にそう思った。思うだけなら勝手だ。自由ともいう。
 
「未来の話をすると鬼が笑う」
「それは来年の話をすると、じゃなかったか」
「そうだっけ」
「ああ、じゃあ確実に訪れるものの話をしようか。っていうか、不確定な未来をここで確かにしてみせようか」
「どうぞ」
「お前らが好きだ」
「へえ。奇遇だ」
「結婚しよう」
「フィンランドにでも行けよ」
「私となら今すぐ出来るけどね」
「願うだけなら自由なんだけど」
「未来なんて永遠みたいなものだね」
 
そうやって
星なんて誰も見てなかった。僕以外は。


----------

なかよし三人組の構図を壊したくないけど見つめ合っちゃう目を逸らせないふたりと、ふたりから目を逸らして星を見上げる僕。っていう…
見てなければ、記憶され記録されなければ、雨も星も降ってたっていなくたって、同じこと。

説明してしまった…修行不足…
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↑old↓new
〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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