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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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蝶々が尋ねる花はこの野にある

即興小説トレーニング」さんで挑戦したもの。

お題:混沌の瞳
制限時間:15分
文字数:754字







振り返って目に飛び込んで来たのは、鳶色の髪だった。升屋はひらひらと白っぽい春物のコートの裾をひらめかせて、蝶々のようにやってくる。色素の薄い升屋が白っぽいものを着ると、なんだかそこだけ色調調整をしたみたいに浮き上がって見える。
 
「今野は明日行くん?」
「升屋は?」
「俺行かない。ハイキングって。標高のひっくい山のぼって眺めもクソもないし」
「升屋が行くなら私も行ってもいいのにな」
「まじでか。なにそれ告白?」
「ううん、一人でも多く誘えばそれだけ副部長が労ってくれんのよ」
「俺の心を弄んだのねー!」
「まだ弄んでないし。お望みならば今からでも弄んであげるし」
「やだ…今野ったら…悪い女…」
「本当に悪い女なら悪い女とは思わせないもんよ」
 
茶番をしながら歩いて行く。食堂への廊下の角を曲がろうとすると、話に出た副部長と出くわした。
 
「あっ、今野と升屋。ちょうどいいとこに。明日行く?最終確認メール回ってるよな」
「回ってきてます。私は勿論行きますよ。升屋は」
「俺も行きますからー」
弾かれたように応えた私の言葉を升屋が遮る。驚いて見やるも、升屋は笑って副部長に手を振る。
 
「じゃあ副部長、また明日」
「ああ。楽しみにしておいてくれ」
 
副部長が踵を返す。ああ、行ってしまった。
 
「…折角ひとが話してたのに、なに。っていうか行かないんじゃなかったの」
「気が変わった。今野は行くんしょ?なら俺も話相手いるかーって思って」
「ハイキングしながらじゃ話す余裕なんてないかもよ。なによ、もう。気紛れなんだから」
「気紛れでケッコー」
「ああ、明日も副部長とどれだけ話せるか。あんたと喋るくらいなら副部長と喋るわ」
 
 
「今野は悪い女だねえ」
 
 
振り返って目に飛び込んで来たのは、鳶色の感情の坩堝。
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フラグメント

↑old↓new
〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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