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洛東

quod tacui et tacendum putavi.

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先生が優秀でしたから

 fkmt作品。天とアカギ。
赤木さんとひろ、アカギと市川さん、ひろと天。

ほぼ推敲なしなので誤字ありそ…








「赤木さん、」
それおいしいですか?と、いいたいのだと思う。
赤木はそう知りながら、何だよひろと返す。
青年というか、少年というか、その狭間の彼はちょっと顔をしかめて、何ともいえない表情をみせる。赤木は素直にわからないといえない彼に意地悪するような、或いはわからねぇといっちまえと唆すような気持ちで、うまいだろ?と訊く。
「ええ、まあ」
彼は無難に答える。赤木は可笑しくなってくつくつと笑う。
そのときふと、ああこういう気分だったのかもしれないなと、腑に落ちた。


「うまいのかい?市川さん」
「…餓鬼にゃわかるめぇ」
「嗜好の違いだろ」
「かもしれねぇな。…いずれ、手前にもわかるだろうよ」
「…賭けるかい?」
儂と同じくらい年をくって、それでもまだうめぇと思わなければ、手前の勝ち。これは嗜好の違いだ。定型文のように餓鬼扱いしてみせた不明を詫びよう。
俺がうんと年をくって、そのときうまいと思ったなら、俺の負け。年月を重ねるということの意味をそのとき悟り、あんたに餓鬼扱いされる正当さに甘んじよう。
「何を賭ける?…市川さん」
「賭けるかよ。手前と賭けごとをしてたまるか」
それに結果がわかるころには儂は生きちゃいめぇよ。
そんな賭けが成立するか、馬鹿馬鹿しい、と老人がいって、彼は、残念、と嘯いた。


ひろの様子を頬杖ついて眺めつつ、赤木は笑う。気付いたひろが、赤木の視線から何かを読み取り、赤木さん人が悪いです、といった。
「俺をいい人だと思ってたのか。驚きだな」
「そうじゃなくて…もう、いいですよ」
「ふ、まぁそういうな。俺の人が悪いのは、俺にそれを教えたのが悪い奴だったからさ」
「赤木さんに…教えた?」
「意外か?…といっても、何の役にも立たねぇことばかりよ。だが、人から教わる悪いことというのも、悪くはないぜ」
誰かに教えを乞う必要がなかった赤木には、誰かから教えて貰ったことというのが、殊のほか稀有で、意味を持つらしい。そのことに、今頃になって気付いた。自分が同じように、誰かにそれを教える段になった今。
どうやら俺は負けたようだと赤木は思った。だがどうやら、負けるが勝ちの類であったらしい。
ジジィめ、と笑いながら、あぁうめぇと赤木はごちた。


「ひろも年をとったなぁ」
天がいって、ひろは何です突然、といった。赤木の墓参りの帰り道である。
昔はかけていなかった眼鏡越しに、天を見やる。初めて会ったときから、十年は過ぎていた。
「そりゃ、年をとりましたよ。当たり前でしょう」
「んん?いやあ…」
男になったな、と思ってよ。
何です気持ち悪い、と返す。邪険にすんなって、と天は笑う。
「昔はんなもん、好きだったかなぁと思っちまってよ」
「ああ…」
いわれて初めて気付いたように、視線を落とす。
「そういや、そうですね…いや、まぁ」
 
「悪いことは大体、あのひとに教えてもらいました」




*****
「蕾」 as far as I know さま
ここでいう悪いことでうまいものが、煙草なのか洋酒なのか博打で人のこころを食うことなのかふぐさしなのか、或いは青少年を大人がからかうことなのか、それ以外なのかといったら、たぶんすべてです。
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フラグメント

↑old↓new
〈落忍〉
生い先こもれる窓のうちなるほど(滝夜叉丸と綾部)
かじつ(五年ろ組)
営門を仰ぐ(小松田)
艶書(会計委員会)
俺の指を噛んで(六年は組)
裏打(伊助とは組の誰か)
全てを捧げる朝(きり丸)
今夜の嵐は荒れるだろう(久々知と伊助)
空蝉(金吾と喜三太)
知音(双忍)
寄する波(会計委員会)
故にあなたを捨てられない(図書委員会)
内密(双忍)

〈グレンラガン〉
手折る指先(ロシウとシモン)
順列のともし火を絶やさぬよう(ロシウとヨーコ)

〈ソウルイーター〉
「ひどく憎んでいるかぎり、まだいくらか愛しているのである。」(シュタイン)
「人間よ。汝、微笑と涙との間の振子よ」(ソウル)
「どんな忠告を与えるにしろ、長々と喋るな。」(椿とブラックスター)
秘密という寓話(マカとソウル)

〈SilverSoul〉
葡萄色した東雲に(銀時と土方ととある女)
フォゲット・ミー・ノット(土方と銀時)
Good bye.(神楽と新八)

〈APH〉
夕焼けに薔薇と桜(イギリスと日本)
ドリンクはお好みで(フランスとイギリスとアメリカ)
約束の約束(アメリカと日本)
落葉の手(日本とイタリアと)
寒鴉ひとこえ是と哭けり(プロイセンとロシア)
わたしの緑、わたしのケロイド(イギリスとアメリカ)
藍より出でて(イギリスと日本)

〈fkmt〉 
2番までは知らない(カイジとアカギ)
銀河と君が近かった時代(ひろと赤木さん)
高さのちがう肩に降る(しげるとカイジ)
きしんだ髪と遠くの愛(カイジ)
先生が優秀でしたから(ひろと赤木さん、市川さんとアカギ)
失う前に捨てなさい(カイジとアカギ)
手遅れになったら会いましょう(アカギとカイジ)
ていたらくの作り笑い(しげると涯と零とカイジ)
今はまだ昨日のこと(赤木さん)

〈neuro〉 
アーケオプテリクスの緑(弥子とネウロ)
a solitary example.(弥子とネウロ)
ラワーレ(弥子とネウロ)
いつも五分前(篚口と弥子)
The sleeping Cat.(ネウロと弥子)
n and y(弥子とネウロ)

〈其の他〉
春風の地平(はぐと花本先生)
無何有郷(ベルとキティ)
蓮(曽良と芭蕉)
君は呟く。(中禅寺と榎木津)
ダーリン・フロム・ヘル(笠野と達海)
くたばってしまえ(静雄と臨也)
こどもは隠れるのがうまい(ジャーファルとアラジン)

〈一次創作:掌編〉
薄荷はレモン
香典はセロリ分引いといたから次は蟹で頼む
星に願いを
みかん捨て場には近いし隣室がちょうどいい
語感で会話してるとこうなるっていう一例
十年一日(俺の十年、奴の一日)
コーヒー置いてけ
船出の刻
透明人間は派手で儚いレインボーの夢を見る
モ・クシュラ
蝶々が尋ねる花はこの野にある
秋は剥落

管理人:りつか

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

quod tacui et tacendum putavi.…「わたしが語らなかったこと、そしてわたしが黙っているべきだと思ったこと」。いわぬが花を口にする無粋、を承知で語らずにはおられない気持ちで。

ぎんたま以外に書いたものを雑多に。 コンセプトは「好きなものを好きなだけ」。

 





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